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おいしさの科学(その1)

おいしさはどうやって生まれる?

おいしさの記憶の説明

人がものを食べるときのことを考えてみましょう。私たちは、手にとる前に外観をみます。どんな色か、形はどうだろうか、光沢があるかなど、まずは視覚でものを認知します。視覚で大丈夫と判断したら、次におそるおそる一口食べてみます。ここでは、歯切れや咀嚼音(聴覚)などを確認すると同時に、香りをかぎ(嗅覚)、舌ざわりや口あたり(触覚)をチェックし、そして実際に総合的な味わい(味覚)で、人はおいしかったとか、おいしくなかったという判断を下します。

さて、私たちがおいしかったかどうか判断するとき、味覚や風味がどうだったかとか、食味がどうだったかという表現をしますが、「味覚」や「風味」、「食味」にはどのような違いがあるのでしょうか。

「味覚」とは味の基本である甘味・辛味・酸味・苦味・うま味と、渋味やあく味を合わせたものです。この味覚に口あたりと香りを加えて感じるものを「風味」といいます。最後の「食味」というのは、外観(色や形・光沢など)と歯切れや咀嚼による感じ方まで含めての判断となります。これが五感を通してのおいしさの感じ方です。

しかしながら、味そのものばかりでなく、それまで口にしてきた食べ物、食習慣などの生活環境や住んいる国(食文化を含む地域性)、気候風土、食べるそのときの室温や湿度、食べるときの空腹・満腹状態、また楽しいときに食べた・悲しいときに食べたなど様々な記憶(子供の頃の母の味)など、食べる人の心理的な要因が大きく作用することを忘れてはなりません。

五感を通したおいしさの感じ方図解

おいしさを引きだす「うま味」成分

鰹節・干ししいたけ・昆布の画像

味覚のところで「うま味」についてふれましたが、おいしさを感じる大きな要因はこのうま味成分です

うま味成分には、主にグルタミン酸とイノシン酸とグアニル酸の3つがあります。日本人にわかりやすい食品で言えば、昆布のうま味成分の60%はグルタミン酸、かつお節のうま味成分はイノシン酸、干し椎茸のうま味成分はグアニル酸です。この3つは「日本料理の三大うま味成分」とよばれています。

グルタミン酸はたんぱく質構成のアミノ酸の1つで、たんぱく質から分離するときにうま味として感じます。うま味調味料として「味の素」は余りにも有名ですが、この主成分もグルタミン酸です。イノシン酸は主に肉類に存在する天然化合物で、上述したようにかつお節のうま味成分としてのイノシン酸が有名です。
グアニル酸は少々聞き慣れないかもしれませんが、日本人なら干し椎茸からおいしいダシが取れることはご存じでしょう。このうま味成分がグアニル酸です。グアニル酸にはおもしろい性質があります。それは未調理時ではうま味を感じないのに、加熱調理することによってうま味が増えることです。

確かに、とろろこんぶやお浸しのおかか添えなど、昆布とかつお節はそのまま口に入れても充分おいしさを感じます。干し椎茸を生でかじることはあまりありませんが、たぶんおいしくはないでしょうね。

野菜のおいしさとは

このことを頭に入れた上でおいしさを感じる食べ方を、「野菜」という素材を中心に考えてみたいと思います。

まずは、野菜という素材の特性を活かし口ざわりもよく、よい香りがしてというふうに「素材にあった調理」が望まれます。野菜はとくに素材その物の切り方によって、味のしみこみ方が異なる場合があります。また一方、味・味覚は時代とともに変化しており、食品全体に甘い味への志向が強くなってきています。

野菜は全般に「あく味」のないものへの品種改良がなされ、クセのない野菜が重宝されています。強制交配によるF1(エフワン)と呼ばれる1代限りの野菜をドレッシングで食べるのが全盛となり、様々な問題も起こってきています。

こうした野菜をめぐる環境を視野にいれながら、おいしい野菜とはどういうものをいうのか、具体的な野菜の種類ごとに考えていきたいと思います。