おいしさの科学(その3):大根編 (1)
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大根といえば青首?
第1話で、食品全体の味が時代と共に「甘味」を求める方向に変わったことを書きましたが、大根のおいしさを語る時にも、それを思い出してみてください。現在、大根の主流となっている「青首大根」も、まさにその流れにそって品種改良されてきた大根なのです。今では、大根と言えば青首大根しかないと思っている人が多いのではないでしょうか。 青首大根は、昭和40年代から大根の主流となり、その他の大根は激減してしまいました。青首大根は辛みが少なく甘味があり、みずみずしく、表面もきれいで、成長しても適当な大きさに育ち、たちまち市場で大根の主流になってしまいました。そこで、ここではまず青首大根について述べることにします。
青首大根が好まれるようになったのは、味や嗜好の変化だけではありません。家族構成や、人々の消費動向が大きく影響しています。長く太すぎる大根は、昭和40年代当時の核家族化した家庭での消費には大きすぎたのです。また生産者サイドからみても、まっすぐで均一な大きさの青首大根は収穫時、地面から浮き上がってくるために抜きやすく、均一な大きさは箱詰めしやすいという利点がありました。
流通面からも好まれた青首種
そのことは流通サイドからみても、まっすぐで均一な長さと大きさの大根のほうがきっちりと箱詰めができ、輸送しやすくて、売り場面積もとらないと好まれたのです。従って市場から農家への注文は、葉が立っていて(このほうが箱に詰めやすくなる)病虫害に侵されていない綺麗なもので、円筒形でみずみずしく充実している大根をということになります。
こうして生まれてきた大根は、果たして消費者にとっておいしい大根だったのでしょうか。冒頭で述べた辛味から甘味への流れの通り、青首大根は味もやさしく、大きさも手頃だったため核家族化の流れと共に市場で歓迎され、全国ブランドになっていったのです。
しかし、最近は食生活の見直しから、野菜本来の味を求める声が増えてきました。昔ながらの味をなつかしむ人たちから、大根が辛くないとか水っぽいという声が上がってくるようになりました。
では、青首大根が生まれる前の大根とは、どんな大根だったのでしょうか。また、「おいしさの科学」というからには、大根の本来的な味を生みだす栄養成分や特性を見つけ、大根を食べることによって体にもたらす効果を探ってみるアプローチも重要でしょう。
そこでまずは日本にどんな大根があって、どのようにして今日にいたったのか、おさらいをしてみましょう。
大根は中国経由で日本にやってきた
大根の原産地としては中央アジア高原、中国華南、地中海沿岸など諸説があり、一般に野菜の多くは中央アジアもしくは中国華南からヨーロッパを経てアメリカ大陸へと伝わっていくという経過が見られます。大根の伝来をさかのぼるとき、日本には中国経由で入ってき
ていると言って間違いないでしょう。しかしその歴史は古く、縄文・弥生時代にねぎなどとすでに移入されているようです。
現在の大根を大別すると、ヨーロッパ系大根(黒だいこん、サラダ用二十日大根)、中国系大根、日本大根の3種があります。日本大根は歴史的にも古く、『古事記』にも記載され、春の七草に「すずしろ」の名で楽しまれています。日本古来の野菜だという人もいます。そうして、この大根が日本各地で地域の風土と文化によって改良され、さまざまな大根として育ってきました。この絵は、江戸時代末期に葛飾北斎が描いた大根と蕪です。
→大根編 (2) につづく
