おいしさの科学(その4):大根編 (2)
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代表的な日本の大根
代表的な大根をあげると関東では亀戸(かめいど)大根、三浦(みうら)大根、練馬(ねりま)大根などです。ほかにも、守口(もりぐち)大根、源助(げんすけ)大根、宮重(みやしげ)大根、桜島(さくらじま)大根などがあり、それぞれの特徴は次のとおりです。
亀戸大根:東京亀戸地区が産地。根の部分が小さく葉っぱは丸みがあり肉質は緻密
。現在では限られた農家しか栽培されていない、江戸東京野菜の1つ
三浦大根:三浦在来種と練馬大根の交配種、長さは抑えられたが中膨れの大きな大根
練馬大根:中膨れで長く大きな大根、抜きにくい
守口大根:細くて長さ1m以上にも及ぶ。漬け物用
源助大根:太く短いが、きめが細かく白い大根。金沢地区で栽培され、金沢の伝統野菜として認定されている。甘く、煮崩れしないのでおでんなどの煮物に向くが日持ちはしない
宮重大根:愛知県春日井地方原産、青首大根の元になっていく大根
桜島大根:桜島の火山灰土で育った蕪のように丸くて大きな大根(15kg以上)
辛味大根:長野県下伊那・上田、岩手、京都など各地にある
大根は収穫時期により春大根、夏大根、冬大根に分けられますが、冬から春にかけて出回るものが多いのが特徴です。上に紹介した大根は各地で「土地の味」として親しまれてきましたが、それぞれの大根にはそれなりの欠点もあり、今も漬物や名産品として残っているものはありますが、一般的な食材としては全国的に流通していません。市場に大量に流通しているのは青首大根のみです。
生は辛く、煮ると甘い
ではいよいよ、「大根のおいしさ」を探っていくために、まずは大根に含まれている栄養成分を調べてみましょう。
大根は95%が水分で、あとはビタミンC、鉄、食物繊維などです。注目すべきはアミラーゼの一種である「ジアスターゼ」が、また葉にはカロテンやカルシウムが多く含まれていることです。 ジアスターゼは「でんぷん」を分解する酵素で、でんぷん質を多く含む食品の消化を助けます。でもこのジアスターゼは熱に弱いため、生食でないと効果を発揮しません。その意味で、つきたての餅を大根おろしで食べたりするのは、おいしさばかりでなく、おなかに負担をかけないという先人の知恵なのかもしれません。
生の大根の特徴は、辛味があるということです。この辛味成分はわさび大根、大根、ブロッコリーなど、アブラナ科の植物に多く含まれているグルコシノレートという成分(カラシ油配糖体)です。これらの植物にはミシロナーゼ(またはチオグルコシターゼ)という加水分解酵素が存在し、大根等植物の組織をすりつぶしたり水を加えたりすると、この加水分解酵素の作用で刺激性の強いイソチオシアネート(からし油)を生成するのです。
その代わり、大根は熱を加えると甘くなります。これは組織が崩壊してグルコースができるからです。また大根は煮るときに、共に煮る魚や肉のうまみ成分とうまくなじみ、その味を吸い取るため、おいしさがいくとおりにも味わえます。
大根は一部の種類を除いて、生でよし、煮てよしと、さまざまな調理法でおいしく食べられます。ほかにも、沢庵をはじめとする漬け物や、輪切りにした大根を寒風にさらしてカチンカチンになるまで干して、鍋などで食べる地方もあるくらいです。世界でも、日本ほど大根の種類が多い地域はないと言われています。このように大根の品種が日本各地にさまざまな形で広がったのは、生育条件としての土壌や気候もさることながら、各地の気候風土にあった多様な調理法(食文化)が開発されてきたからに違いありません。
ただトマトなどと違い、大根が過熟すると「す」が入り、食べてもおいしくありません。この点だけはくれぐれもご注意ください。
